コラム
福岡市の交通事故に強い弁護士【被害者側】
コラム
交通事故で受傷して通院を開始すると、病院の受付で「交通事故であれば自賠責保険で治療されますね。」というようなことを言われ、窓口でお会計はせずに「保険会社へ連絡してください。」といわれるだけ。保険会社というのは任意保険のはずだし、どういうこと?って思いませんか。解説してみました。
昨日、大通りを走行していたところ、右車線を走行していた車両が私の車両に気づかずに車線変更をして接触する、という事故に遭いました。事故直後から首や腰に痛みを感じていましたので、警察の事故処理が終わったあと、自宅近くの整形外科に通院しました。いつも通っている整形外科だったので、受付で保険証を出しました。問診票に記載が終わって受付に出したら、「交通事故のお怪我であれば自賠責保険を使いますから、保険証はお返ししますね。」とのこと。先生の診察が終わってお薬をもらって帰る際にも、治療費はおろか、薬代も請求されませんでした。ただ、診察券を渡されて、「ここへ通院していることを保険会社へ連絡してください。」とのこと。相手の保険会社がどこかわからないし、と思っていたら、診察中に電話が入っており、折り返しの電話で通院の事実を伝えました。その後もその整形外科に継続して通院していますが、治療費等の請求は一切受けていません。以前事故に遭った知り合いから事故の治療費は任意保険会社が払う、と聞いてはいましたが、どういうことなのでしょうか。
まずは、自賠責保険と任意保険の違いから確認します。自賠責保険とは、交通事故による被害者を救済するため、法律に基づき、すべての自動車に加入することが義務付けられている強制保険です。一方、任意保険は、法律等で加入が義務付けられているわけではありません(そのため、「任意」保険と呼ばれます。)。
自賠責保険は人身損害(死亡やお怪我)しか対象にせず、物損はその保障範囲外です。任意保険の保障内容は保険契約によって様々であり、ただ、一般的には人に怪我をさせた場合の治療費等の損害を填補する保険(対人保険)と人の車に損害を与えた場合の修理費等の損害を補填する保険(対物保険)は備えていることが多いです。
では、自賠責保険も任意保険も保障範囲に含まれている人身損害について、そのすみわけはどうなっているのでしょうか。これは、自賠責保険において保険金支払限度額があり、それを超える部分について任意保険がその支払限度額の範囲で対応するという構造になっています。自賠責保険は大別して「傷害」、「後遺障害」、「死亡」に分けて支払限度額を設定されており、例えば、被害者1名につき、傷害については120万円、死亡については3000万円となっています。
傷害事案(交通事故でお怪我を負ったものの、死亡に至ることはなく、後遺障害も残存しなかった場合)についてみると、例えば、お怪我の治療のためにかかった治療費が120万円だとすると、自賠責保険から治療費以外の損害(慰謝料等)が支払われることはありません。もし、加害者が任意保険に加入していれば、慰謝料等の損害はその任意保険から支払われることになります。
このように、人身損害について、自賠責保険と任意保険とは、1階部分と2階部分という関係にあるのです。
そして、自賠責保険においては、治療費がその他の損害に優先して支払われるというルールがありますので、通院先医療機関で言われる「自賠責保険で治療する」というのはあながち間違いではありません。しかしながら、正確とも言えません。
自賠責保険で保険金を支払ってもらう方法としては、被害者が直接自賠責保険に請求する方法(被害者請求)と、被害者に対して損害を賠償した加害者が自賠責保険に請求する方法(加害者請求)があります(いずれにおいても必ず支払われるわけではありません。)。
そうすると、医療機関が交通事故の治療費を受け取る方法としては、①被害者に払ってもらう、②加害者に払ってもらう、③治療費は一度保留にして(請求中という状態)、被害者請求が認められた場合、自賠責保険から払ってもらうという3つが考えられるところです。ただし、多くの場合①を選択されるケースが多いようです(その理由は、被害者・加害者間のいざこざに巻き込まれないため、一度保留にすると支払いがされる蓋然性が減る等様々だと思います。)。
ただ、現実には上記①〜③の方法がとられることは少ないようです。では、どのような方法がとられているのでしょうか。
それは、自賠責保険ではなく、任意保険会社から治療費を払ってもらう方法です。任意保険会社は、いくつかの条件を満たした場合、被害者が通院する医療機関に対して、随時、直接、治療費を支払う対応をとることがあります(これを、任意保険会社は「一括払い」、「一括対応」などと言います。)。示談や和解をしていない状況であったとしても、任意保険会社において検討し、いずれ払わないといけない可能性が十分に高いと考えられる範囲内、ということにはなると思いますが、このような対応をとります。そして、任意保険会社は、その支払った部分について、自賠責保険の支払限度額の範囲で自賠責保険から支払いを受けます。すなわち、この部分については自賠責保険の代わりに被害者に支払いをした加害者、ということになるわけです。
これによれば、医療機関は随時治療費を受け取ることができ、被害者の方も被害者請求等をすることなく、また、医療機関の窓口で治療費を負担することなく、通院を継続することができるということになります。現在、被害者の方の治療費の対応はこのように行われることが一般的だと思います。
医療機関などから言われる「交通事故に遭った場合、自賠責保険で治療」というのは、上記の意味で正しくありません。自賠責保険と任意保険は別物であり、医療機関は任意保険から治療費を支払われていることが大半です。
少なくとも、任意保険会社の担当者は以上を前提に話をしていますから、以上のことを知っておくと担当者の言っていることが比較的わかりやすいのではないかと思います。
保険の内容は複雑です。保険会社はその辺りプロとして対応してきます。もし、ご不明な点が出てくれば、まずは、弁護士へご相談されてみてもよいかもしれません。
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