コラム

交通事故が起こった際、過失って誰が決めるの?

交通事故が起こったときに保険会社の担当者から「過失は○対○です。」というような発言をされたことはありませんか。
保険会社から言われることだから、と流してしまうこともしばしばですが、それで本当にいいのでしょうか。考えてみました。

ご依頼内容

 先日、自分の車で国道の第1車線を走っていたところ、第2車線を並走していた車が第1車線に車線変更した際に右からぶつけられました。幸いケガはなかったものの、車両の右側面は凹んでしまい、修理せずには乗れません。

相手の方が自分が全面的に悪いですとおっしゃっていたので保険会社に修理してもらえばいいかと考えていましたが、保険会社の担当者は最初の電話から「今回の過失は3:7です。」「双方とも動いていたからあなたにも過失があります。」と言ってこちらの言い分は全然聞いてもらえません。
保険会社が言うことだから間違いないのかと思う反面、釈然としない部分もあります。3割部分の手出しは仕方ないのでしょうか。

なぜ過失を決めるのか

なぜ過失を決めるのか

 前提として、なぜ、交通事故が起こった場合、過失割合を決めるのでしょうか。これは、一言で申し上げると「賠償上必要だから」ということに尽きます。
では、具体的にどのように必要なのか。自分の過失割合は、「自身が相手の損害の何割を払えばいいのか」、相手の過失割合は、「自身が相手から自身の損害の何割を払ってもらえるのか」を決めるために必要になります。

 たとえば、自身の修理代が100万円、相手の修理代が50万円であり、過失が自身:相手=3:7だった場合、細かい議論を省けば、自身は相手に対して50万円の3割(=15万円)を支払わなければならないし、自身は相手から100万円の7割(=70万円)を払ってもらえる、ということになります。
なお、この場合、相手方に対して払うべき15万円の他に、自身の損害の内相手から払われなかった金額(100万円-70万円=30万円)についても自身で負担しなければならない点に注意が必要です。

過失は誰が決めるのか

 過失は誰が決めるのか。
最もわかりやすいのは「裁判官」ではないでしょうか。過失の争いがまとまらずいずれかが訴訟を提起した(裁判を起こした)場合、最終的には裁判所において過失の判断がされ、それに伴って双方の賠償額が決まっていくことになります。

 しかし、全ての交通事故が裁判になるわけではありません。多くの場合、裁判前に「和解」(又は示談。以下「和解」で統一します。)という形で決着がついています。
ここで、「和解」とは、ある一定の内容で賠償問題に決着をつけることを双方が了解すること、と考えていただいたらいいかと思います。
「和解」とは、決して仲直りをする必要はなく、あくまでも賠償問題の決着に主眼が置かれます。

 では、和解の場合、過失は誰が決めるのか。
「和解」には「双方の了解」が必要になるところ、これは「過失」においても同様ですから、和解において過失は「双方の合意で決められる」ということになります。保険会社の一方的な見解だけでは決まらないわけです。

保険会社に過失割合を提示された場合の対応

保険会社に過失割合を提示された場合の対応

 では、事故後、保険会社から過失割合を提示された場合、どのように対応すればいいのでしょうか。
既に述べたとおり、こちらが「Yes」と言わなければ和解にはなりませんから、保険会社としても過失を決めることはできません。しかし、長引いたからといって必ずしも得をするわけではありません。
そこで、建設的に話を進めていくにあたって、まずは相手保険会社が提示してきた過失割合の根拠を聞きましょう。

 ここで根拠とは大きく分けて2つに分けられます。
まず1つは保険会社が想定している事故状況です。こちらとしては、第2車線にいた相手車両が車線をまたいでぶつかってきたと思っているのに、相手は第1車線を走行していたこちらの車両が車線をまたいで第2車線を走っていた相手車両にぶつかっていったと主張しているかもしれません。
これでは双方とも「相手に当てられた」という主張をしているようなものであり、過失の話がまとまるわけがありません。ドライブレコーダーなどが残っていればまだしも、損傷状況だけからはどちらの言い分が正しいかはっきりしないことも多くあり、この様な場合には訴訟やむなしかもしれません。
その見極めのためにも相手保険会社が想定している事故状況を確認する必要があります。

 次に、その事故状況を前提として、なぜその過失割合(本件では3:7)になるのか、という点の根拠です。
「類似事故の判例がある」、「判例タイムズに載っている」というのであれば、それを提示してもらいましょう(判例タイムズというのは、自動車事故の類型的な過失割合がまとめられた書籍で裁判所や弁護士も参照します。細かく言うと「別冊判例タイムズ38号」といいます。)。

 以上2つの根拠が示された上で、相手保険会社の提示した過失割合で了解ができるかどうかが問題です。
もし、ご自身で判断できない場合は、ぜひ弁護士にご相談ください。

その他考えなければならないこと

 物損においては、このような過失割合の争いがメインとなることが多いですが、他にも損害額の争い(修理代は本当に100万円なのか、そうであるとしても車自体の価値が低いのではないか、代車代を誰がどのように負担するのか等)もあります。
また、今回の例ではこちらは相手方に払う15万円と自身の車両を修理するために相手からの支払いで填補されない30万円を負担しなければなりません。
この点保険を使うことも考えられるところですが、その場合にはぜひメリットとデメリットを把握した上で使うかどうかを決めていただければと思います。

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